日本電信電話(以下NTT)が、株式公開買い付け(TOB)を通じてNTTドコモ(以下ドコモ)を完全子会社化すると発表しました。
NTTはドコモの株の64%を保有する筆頭株主であるわけですが、市場に流通している残りの36%の株式を買い取って、ドコモを完全子会社するということです。
そして、完全子会社になったドコモは「親会社であるNTTが株式を全部買い占めて、株式を自由に売買できないようにします」という意味ですから、証券取引所では株式が売買できなくなります。 つまり上場廃止ということです。
そうです!ドコモは上場廃止となるのです。
上場廃止!だけ聞くとマイナスなイメージが強いため、株価は下がりそうなものですが、上場廃止になる理由がTOBであるために、9月30日ドコモの株価は+16%のストップ高となりました。
この記事では、
これからKDDIやソフトバンクと言った通信サービス銘柄に投資をしたいと思っている投資家や
買い増しを悩んでいる投資家のヒントになれば幸いです。
どうしてドコモの株価は上がったの?
どうしてドコモの株価が上がるのか?ですが、それはNTTがプレミアムを付けて株を買い取ってくれるという保証があるからです。
プレミアムというのは、実際の株価よりも高く買い取る金額のことです。
親会社になるNTTの都合で市場に流通しているドコモ株を、ある種強制的に回収するわけですから、もともと持っていた残り36%の株主に色(プレミアム)を付けて買い取らなければいけません。
そこでどれだけのプレミアムをつけたか?ですが、昨日9月29日の終値¥2,775に対して、¥3,900で買い取る(TOB)とNTTは発表しました。
+40.5%です!
+30%が平均的と言われるなかでこのだけのプレミアムは非常に高いです。
よって今回のようなTOBでは、今のうちに株を持っていれば儲かる!という投資家からの買いの注文が殺到するために、TOBの噂が流れた9月30日朝の段階からドコモの株価はストップ高となりました。
NTTの株主は財務省
NTTの32%を保有している筆頭株主は財務大臣(財務省)です。
つまり、今後完全子会社になるドコモの筆頭株主も財務大臣(国、政府)ということになりますから、これからのドコモの動きは、国・政府の意向が強くは反映されるということが容易に想像できます。
通信サービスに対する国・政府の意向とはなんだったでしょうか?
そうです!菅首相が言った鶴の一声『通信料金の値下げ』です。
よって、政府主導のもとドコモの通信料金が引き下がれば、他の2大キャリアであるKDDI、ソフトバンクも必然的に料金を引き下げねばなりません。
なぜなら、同様のサービスをドコモの方では低料金で提供しているとなれば、だれだってキャリアを移行してしまうからです。
だから、KDDI、ソフトバンクもドコモが提示する通信料金と同水準まで引き下げた通信料金に値下げせざるを得ません。
各社の通信料金が値下がれば
各社の通信料金が値下がれば、企業の収益が低下するのは当然です。
企業の収益が減ることが事前にわかっている企業にあなたは投資をしますか?
少なくとも短期的に投資をしている投資家からは、大いに敬遠されるでしょう。
だから収益性が下がれば、普通は株価も下がります。
その証拠に、KDDIとソフトバンクの株価は9月29日の一日で約4%も下落していますし、KDDIの株価に関して、7月下旬につけた高値から約21%も下落しています。
通信料金の値下げは一般市民には喜ばしいニュースだと思いますが、投資家にとってはいろいろ考えさせられるニュースとなります。
菅首相の鶴の一声があったときから、ドコモの株価は下がると考え空売りをしていた投資家には、今回のTOBのニュースは痛手だったと思います。
また、以前からドコモを高配当株として保有していた投資家にとっては、貴重な配当金という源泉がひとつ減るわけですから、次の源泉をどこにするのか?考えなければなりません。
まとめ
日本電信電話(以下NTT)が、株式公開買い付け(TOB)を通じてドコモを完全子会社化すると噂が流れた後に発表されたことで、ドコモの株価は上がりました。
これはNTTが残りの株数をプレミアムを付けて買い取る可能性が非常に高い!と公算されたからです。
しかし、同じ通信銘柄であるKDDIやソフトバンクの株価は下落しました。
これは通信料金の値下がりがほぼ確実となり、それによって収益の減少が容易に予想されたからです。
では、これから通信銘柄であるKDDIやソフトバンクに投資をしようかな?また買い増しをしようか?と悩んでいる方はどうすればいいのか?
今のKDDIやソフトバンクは落ちるナイフと同じ状況だと私は思います。
よって、基本は様子見です。
しかし、割安な今のうちに買いたい!底を掴みたいという衝動に駆られる気持ちもわかります。
そういう方には、単元未満株でちょっとずつちょっとずつ買っていくことをおすすめします。
そうすることで、買わなかったことであとあと後悔することもありませんし、株価がV字回復するころには平均取得株価を下げることができます。
しかし下落後に再上昇のする保証はどこにもありませんので、買い付けする際は自己判断でお願いいたします。