2020年10月22日、米国製薬大手ギリアド・サイエンシズ(以下、GILD)の新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル(商品名:ベクルリー)」が、米国食品医薬品局(以下、FDA)によって、入院を必要とするCOVID-19患者の治療に対する抗ウイルス薬として承認をしたことを発表しました。
先日の2020年10月15日には、レムデシビルが入院患者の死亡率改善に大きな効果を与えなかった!として、世界保健機関(WHO)が実施した臨床試験(治験)を踏まえて発表しましたばかりです。
レムデシビルに期待していいのか?期待してはダメなのか?市場はどちらを信じているのでしょうか?
ここ数ヶ月のレムデシビルに関する動きをまとめ、裏情報についても記事にし、今後のGILDの株価を予想していきます。
レムデシビルの経過
2020年1月下旬 COVID-19患者に感染していることが確認された最初の米国の患者に、未承認薬のコンパッショネート使用として、レムデシビルが投与されました。
コンパッショネート使用というのは、生命に関わる疾患を有する患者のため、例外的に、その効果や安全性が科学的に確認がされていない未承認薬の人道的使用を認める制度。
このことを機に4月までにGILDの株価は最大約30%上昇しました。
4月23日 米国の医学情報報道サイト STAT の報道によって、COVID-19患者の死亡率はレムデシビル投与群が13.9%、対照群が12.8%であり、有意な差は見られなかったと報告されてから以降、GILDの株価は下落を続け、年初来安値を更新しています。
10月7日 GILDは「レムデシビル」のCOVID-19患者を対象とした臨床試験の最終分析で、同薬を投与した患者群はプラセボ(偽薬)群と比べて治療期間が5日間短くする効果が確認された。と、医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンで発表しましたが、株価への影響は期待されるほどのものではありませんでした。
10月15日 GILDは「レムデシビル」がCOVID-19入院患者の死亡率改善に大きな効果を与えなかった!として、世界保健機関(WHO)が、実施した臨床試験(治験)を踏まえて発表しました。
10月22日 米国食品医薬品局(以下、FDA)によって、入院を必要とするCOVID-19患者の治療に対する抗ウイルス薬として承認をしたことを発表しました。コンパッショネート使用から約9か月経って、レムデシビルは米国で最初で唯一承認されたCOVID-19治療薬となりました。
厚生労働省の対応
5月12日に、日本での医療現場への供給が開始されたことが、当時の厚労省大臣によって発表されたわけですが、WHOのレムデシビルに対する『COVID-19入院患者の死亡率改善に大きな効果を与えなかった!』という発言を、厚労省はどのようにとらえているのかというと、
WHOの臨床試験は中間結果であり、この中間結果には専門家による査読がなされていない段階だと指摘をし、今後の情報に注視するとのことです。
裏情報?!
10月22日のFDA承認となったのは成人および小児患者(12歳以上および少なくとも40kgの重さ)に対しての承認だったわけですが、
並行して、3.5kgから40kg未満の体重、または12歳未満の入院小児患者を治療するためにレムデシビルを使用するための新しい緊急使用承認(EUA)が発行されました。
補足として、12歳未満または体重40kg未満の小児患者におけるレムデシビルの使用はFDAによって承認されておらず、この使用に対するレムデシビルの安全性と有効性は確立されていないため、緊急使用承認(EUA)の認可は一時的なもので、取り消される可能性があります。
体重3.5㎏以上だと、出生数カ月の乳児にも使用できるということですから、その期待は大きいです。
チャート
2020年1月下旬、COVID-19患者に未承認薬のコンパッショネート使用として、レムデシビルが投与されたことを機に株価は上昇しましたが、
4月23日、米国の医学情報報道サイト STAT の報道や
10月15日のWHOによる、レムデシビルがCOVID-19患者の死亡率改善に大きな効果を与えなかった!とという発表を受けて、株価は下落を続け年初来安値を更新しています。
そして、サポートとなっていたトレンドラインを下に貫いてしまいました。
私は前回の記事で、目先は直近の安値である$61.65を下回るかどうか?に、注視して安値を更新するなら下落はまだまだ続くだろうと考えていましたが、
ここへきて、レムデシビルがFDAに承認されたうえに、小児への投与も緊急使用承認(EUA)されたことを好機に、10月23日の株価は一瞬約4.5%上昇しています。
出来高も普段の約2.5倍ほどあり、このまま50日移動平均線を上に突き抜けてくれることを期待してしまいます。
たしかに、10月23日株価は上昇しましたが、早朝に上昇しただけでかなり一過性のものであることが15分足で見るとわかってしまいました。
WHOの発言がどうしても足かせとなっているようです。
チャートから、依然として弱気相場であり、株価が上昇の期待は薄いです。
ただ日足ではMACDとダイバージェンスを起こしているので、急な下落は起こりにくく、横ばいが続くかもしれません。
まとめ
2020年10月22日、GILDの新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル(商品名:ベクルリー)」が、FDAによって、入院を必要とするCOVID-19患者の治療に対する抗ウイルス薬として承認をしたことを発表しました。
これを受けて、株価は爆上げする!と思われたのですが、10月23日の株価上昇はかなり一過性で終わっており、そう簡単な話ではないようです。
しかし、いまのところレムデシビルは、米国で最初で唯一承認されたCOVID-19治療薬であることに変わりはありません!
よって、他のCOVID-19治療薬(デキサメタゾンなど)がFDAによって承認されるまでは、株価上昇に期待したいです。
ちなみに、GILDの配当利回りは4.47%ですから高配当銘柄ですし、その増配年数は5年です。