
個別株に投資をしようと思ったとき、『みんなiPhone使ってるし、米国株のAppleに投資しよう』とか『Nintendo Switchの人気はまだまだ続きそうだし、任天堂の株を買おう』など、時事ニュースや生活の中から肌で感じた内容をもとに個別株を買う人もいると思います。
しかし、私が個別株の購入を検討するときは、企業の業績を確認したいです。なぜなら、その企業の株を買った後に業績悪化が原因で株価が暴落したり、配当金の減配があっては困るからです。
このような理由で私は企業の業績を確認したいわけですが、業績を確認するということは、つまり決算書に目を通さなければなりません。
決算書を簡単に言うと財務3表になるわけですが、それぞれ
- 損益計算書(P/L)
- 貸借対照表(B/S)
- キャッシュフロー計算書(C/S)
の3つになり、この3つのすべてに目を通し理解しようというわけですから、なかなか骨が折れますよね?
そこで、決算書についての書籍を数冊読んだ私が、もっともわかりやすく参考になった『会計超入門! 知識ゼロでも2時間で決算書が読めるようになる!改訂版』を紹介したいと思います。
この書籍は、わかりやすさを重視しているために、目から鱗が落ちるということを体感できるくらいに読みやすいですからおすすめです。
なかでも、
- 短時間で決算書を理解したい
- 簿記3級を取得するために、財務諸表を理解したい
- 個別銘柄に投資をするため、決算書を読めるようになりたい
- 他の財務諸表についての書籍を読んだけど、ちょっと難しかった
以上のような方々に、非常に参考になる書籍となっておりますので、是非手に取って読んで欲しいと思います。
著者の紹介
まずは、著者の「佐伯良隆」氏の紹介です。
早稲田大学政治経済学部卒の、ハーバード大学経営大学院MBA。
日本開発銀行にて企業向け融資の業務にあたるほか、世界銀行や日本政府のプロジェクトとして、諸外国で財務研修を実施。
その後、米国投資顧問会社であるアライアンス・バーンスタインにて、金融アナリストおよびファンドマネジャーとして活躍。さまざまな経営者と会い、企業分析をすことで、巨額の資金に関わる投資判断を思う。
また、ビジネススクールにて長年ファイナンス系科目の教鞭を執りながら、中立公正な立場で正しい金融知識を普及すべく活動しています。
今日紹介する著書以外にも、『100分でわかる! 決算書「分析」超入門 2021』という著書があることからもわかるように、難解な金融や会計のテーマをわかりやすく解説する手法に定評がある方です。
読みどころ
なぜこの書籍が、他の決算書を解説したものよりもわかりやすいのかというと、難しい内容を身近なものにたとえることで、内容がスーッと入ってくる仕組みにしているからです。
では本誌で、実際にどのようにたとえているのか紹介しましょう。
貸借対照表(バランス・シート)を例に話していきます。
まず貸借対照表をグーグルで検索して、最初のサイトでどのように解説しているかを、見ていきます。
貸借対照表は、決算日における財政状態(資産、負債の内容)が表示されていて、大きく5つのブロックに分けて把握すると、財政状態を把握しやすくなります。また、貸借対照表は、流動資産や流動負債の区分の中でも、流動性の高い項目を上位に表示します。
経理compass より

- 流動資産
- 固定資産
- 流動負債
- 固定負債
- 純資産
その会社が健全かどうかを判断するためには、①~⑤の流動資産や固定資産、流動負債などの項目を1つ1つ見ていくのではなく、それぞれの項目同士のバランスを見ていくことが大切です。
例えば、会社が安定して健全な経営をしているかどうかは、純資産を総資本で割った比率でみることができます。純資産は返済の必要のない自己資本です。総資本の中に占める純資産の割合が大きければ大きいほど、返済の必要のない資金で会社が運営されていることを意味します。
経理compass より
などなど、抜粋もしていますが、だいたいはどのサイトも書籍もこんなかんじです。
書かれている内容ですが、わからなくもないけど、なんかとっつきにくさを感じませんか?
少なくとも、私はとっつきにくさを感じます。
とっつきにくい本と言うことは、つまり内容が入りずらい本と言えるので、このままだと眠くなって本を閉じそうですね。
つぎに『会計超入門! 知識ゼロでも2時間で決算書が読めるようになる!改訂版』では、どのように解説してるのかというと、
体つき(脂肪や筋肉のつき具合)や骨格のようすから、会社の健康状態をチェックするのが、貸借対照表です。
つまり貸借対照表は、健康診断で渡される健康データに似ていて、
- 悪玉コレステロールのような余分な脂肪(在庫)はつきすぎていないか
- 売上を生み出す筋肉(設備、施設)があるか
- 病気(経営悪化)の心配はないのか
を数字でみることができる。
このように貸借対照表を、人間の体にたとえています。
さらに、貸借対照表は、健康診断で渡される健康データに似ていると言っていますが、
- 余分な在庫つまりγ-GTPが…
- 流動負債はステロイドのように…
- 純資産はBMIでいうと…
など難しい言葉はいっさい使われていないため、非常にとっつきやすい内容となっています。
さらに、言い回しだけではなく図解もわかりやすくなっていて、下の図解は、貸借対照表について書籍の82ページにかかれている内容を、写したものなのですが、
貸借対照表の左側は流動資産と固定資産を合わせた総資産を示し、脂肪や筋肉に例えています。

つぎに、貸借対照表の右側は負債と純資産を合わせた会社の財産の元手を、筋肉増強剤や骨格に例えています。

上の図解を使って解説すると、例えば
- 見た目は筋肉マッチョ(固定資産が多い)でも、
- 筋肉増強剤で筋肉を大きくみせている(負債が多い)だけで、
- 実は骨格がもろい(純資産が少ない)場合は、
- コケたときにすぐに骨折(倒産危機)しやすい
こういったことが、イメージしやすくなると思います。
なんどもいいますがこの書籍は、言葉と図解の両方がわかりやすいですから、わかりみが深いという言葉がピッタリな書籍です。
なかでも、棚卸資産などを悪玉コレステロールに例えているのは秀逸だと思いました。なぜなら、どちらも、少なすぎても多すぎてもよくないという特性がマッチしているからです。
少し説明すると、棚卸資産(在庫)は少なすぎると、売れ行きがよいときに商品が供給できなくなりますし、逆に在庫が多すぎると過剰在庫のリスクをともないます。
また、悪玉コレステロールも低すぎると脳出血のリスクが上がると言われていますし、反対に高すぎると動脈硬化の原因になりやすいので、
流動資産を脂肪に例えて、現金と棚卸資産を、それぞれ善玉コレステロールと悪玉コレステロールに例えることは、理にかなっていると思います。
ライバル本よりわかりやすい
こちらの書籍は、他の決算書について解説しているどの書籍よりも、どのサイトよりも決算書についてわかりやすく解説していると思っています。
実は、『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』という、かなり人気の高い書籍があって、先に読んでみました。
「受験勉強は、問題を解くことから始めて、わからないところを明確にしたのちに、それについて学ぶ」という勉強方法を取り入れていた私にとって、
クイズを解きながら財務3表を理解する!という方法を謳っている本は、わたしにうってつけの本だと思って手に取りました。
内容はイラストもたくさんあって、カラフルでキレイなため、見やすかったです。
でも、特別わかりやすいという印象は受けませんでしたね。
結局、最後まで読めずに本を閉じてしまいました。
この経験からもわかったことは、わかりやすさという点で『会計超入門! 知識ゼロでも2時間で決算書が読めるようになる!改訂版』にまさる書籍はなかったということです。
まとめ
今回は『会計超入門! 知識ゼロでも2時間で決算書が読めるようになる!改訂版』を紹介しました。
タイトルにある2時間を目標に読み切ることを目指しましたが、基本読むことの苦手な私には、2時間で読み切ることはできませんでした。
でも、内容が非常にわかりやすいために、読み続けることは苦にならなかったので、最後まで読みきることができました。苦になっていないということは、それだけわかりやすかったと言うことです。
『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』など、他の決算書について解説している書籍や、ウェブサイトを読んでも、決算書を理解できなかった!とあきらめてしまった方には、
ぜひ『会計超入門! 知識ゼロでも2時間で決算書が読めるようになる!改訂版』を手に取ってほしいと思います。
そうすれば、決算書を理解できるようになり、それを読むことが楽しくなりますから、企業の健康状態をレントゲン写真でみるかのように、見透かすことができるようになるかもしれません。
また、簿記3級の取得したいのに、財務諸表がわからない!とつまずいていた方の手助けにもなると思いますので、買って損のない書籍です。
さいごに、決算書についてさらに理解を深めたいという方は、こちらの書籍で決算書についての基礎を学んだのちに、実力を確認するという意味で、会計クイズに挑戦してみてはいかがでしょうか?