グーグルは米国のオンライン検索市場で約90%のシェアを占めているわけですが、米司法省は2020年10月20日、グーグルを反トラスト法(簡単にいうと独占禁止法)に違反しているとして、首都ワシントンの連邦地裁に提訴し、同社が独占的な支配力を乱用したと主張しました。
米司法省が反トラスト法で提訴するのは、1998年にマイクロソフトを反トラスト法違反で提訴して以来であり、今回も大型訴訟となりそうです。
その時のマイクロソフト訴訟を振り返りながら、今後のグーグルの株価を予想したいと思います。
1998年マイクロソフト訴訟を振り返える
米司法省と米国の19州およびワシントンD.C.が1998年5月に、Microsoftが市場における独占的立場を悪用して競合他社の競争力を削ぎ、消費者の利害を犯したとして提訴しました。
マイクロソフトの次期 OS「Windows98」に対し、ブラウザを組み合わせるのは反トラスト法違反の抱き合わせ販売に当たるとして、提訴されたわけです。
米司法省らは、マイクロソフトがOSとブラウザを抱き合わせ販売することで、ブラウザ市場で当時ライバルだったネットスケープ・コミュニケーションズを追い落とそうと、Windows(マイクロソフト)の支配力を不当に利用しているとしました。
これに対して、マイクロソフトは「OS とブラウザーは一体のものであり、抱き合わせ販売には当たらない」と反論したのは言うまでもありません。
2000年4月には連邦地裁でマイクロソフトは敗訴し、同社のOS部門とアプリケーション部門の分割命令が出たが、この判決に対しマイクロソフト側は控訴する意向を表明しました。
マイクロソフトは控訴審をワシントン連邦高裁で開くよう求める意見書を 2000 年8月22日に提出し、その結果、裁判の場(控訴審)は連邦地裁から連邦高裁へと場所を代えて行われることとなりました。
高裁での争点は、
- 分割しても独占企業が新たな独占企業にとって変わられるだけではないのか?
- ネットスケープの顧客が増加しているのはなぜか?
- 消費者側が具体的にどのような不利益を被ったのか?
- OSとブラウザで部門を2分割する根拠が不明!
以上の点で争われたわけだが、高裁ではマイクロソフトよりも政府側に厳しい内容が多く、主任検事からも新たに説得力のある説明がなかったことから、マイクロソフトに有利にみえたそうです。
連邦高裁の判決
2001年6月28日 連邦高裁の判決は、
マイクロソフト社を2分割せよ!という連邦地裁の命令を取り消し、無効とした
マイクロソフト社は OS 市場において独占力を持っていたと認定した
独禁法違反行為があったことは認定しており、連邦地裁への差し戻し審で新たな改善措置を検討することが命じられました。
舞台は地裁での再審へと場所が戻ったわけですが、双方が争うことはなく、同年11月に司法省とマイクロソフトの和解が成立しました。
和解案の内容は
- 基本ソフト「Windows」に様々な応用ソフトの統合を認める
- パソコンメーカーは独自に統合するソフトの範囲を決めることができる
- 期待した応用ソフトをメーカーが Windows に統合しなかったという理由で、罰則を与えるような契約は禁止
- 応用ソフトを統合した Windows の割引販売は可能
- Windows の情報開示の範囲を拡大する
- パソコン利用者が応用ソフトを取り除ける機能を設ける
- 和解実施状況を点検するため独立した委員会を設ける
などの内容で、2002年11月に両者の和解案が承認されました。
チャート
上図は訴訟から和解までの1998年~2003年の間の月足チャートです。
1998年5月に提訴され、2000年4月に地裁で敗訴するまでの約2年間で、株価は最大約170%も上がり続けました。
これは、消費者側は具体的な不利益を被っていないと投資家達が考えていたためだと思います。
しかし、敗訴した後の株価は当然のごとく下がっていき、75月移動平均線がサポートとなるまで60%以上の暴落を続け、和解が成立するまでは横ばいないし、若干の弱気相場が続いています。
2002年に和解が成立しましたが、その後の株価は2014年くらいまで横ばいが続いています。
そのわけですが、裁判の和解条項に基づいて、定期的に連邦地裁に共同で報告書を提出する期限が2011年5月まで続いていたことが、背景にあります。
つまり、2002年から2011年は政府の目が光り続けていたために、マイクロソフトは目立った行動ができないと、投資家達は考えていたわけです。
まとめ
マイクロソフトが米司法省に提訴されてから、第一審の判決が出るまでの約2年間、マイクロソフトの株価は上がり続けました。
これは消費者側には具体的な不利益がない!と投資家達が考えていたためだと思います。
しかし、判決は敗訴しましたため、株価は下落します。
その後の再審で実質的な勝訴からの和解へと進むわけですが、長期的な報告書の提出が足かせとなって株価は横ばいとなりました。
グーグルも、第一審の判決ができるまでは、他のハイテク株同様に株価は上昇を続けると思いますが、一度でも敗訴すると、失速することは誰でも予測がつくと思います。そしてマイクロソフトの歴史を振り返ってみると、その失速は長期に及ぼしそうです。
私個人としては、グーグルは消費者に不利益を与えていないと考えているので、勝訴となる公算は高いと考えています。
しかし、グーグルの検索機能、つまりSEOについてはブロガーとして疑問が残るので、裁判の結果には注視していきます。
とりあえず今日もグーグルの株価は絶好調のようです。